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情シス DX推進の実践ガイド:IT企業が戦略的変革を実現する5つのステップ

情シス DX推進の実践ガイド:IT企業が戦略的変革を実現する5つのステップ
ヘルプデスク

 IT企業の情報システム部門は大きな転換点に立っています。
従来の運用管理中心の役割から企業のデジタル変革を牽引する戦略的パートナーへの進化が求められているのです。

 しかし、現実には日常業務に追われてDX推進に十分なリソースを割けない、どこから手をつけていいか分からない、といった課題を抱える方も多いのではないでしょうか。

 本記事ではIT企業の情報システム部門の管理職や担当者に向けて、運用業務とDX推進を両立させながら、部門の戦略的価値を高める方法をお伝えします。

  • 社内問い合わせ対応に追われてDX推進などの戦略業務に時間を割けずに悩んでいる方
  • 日々の問い合わせ業務を効率化して業務負荷を軽減したいと考えている方
  • 情報システム部門の生産性向上とコスト最適化を検討している方

1.​​​​情シス DXがIT企業にもたらす戦略的価値

 情シス部門のDX推進は、単なるシステムのデジタル化にとどまりません
企業全体の競争力向上と持続的成長を実現する重要な戦略的取り組みです。
従来の情報システム部門は「コストセンター」として位置づけられることが多く、システム運用やトラブル対応といった守りの業務が中心でした。
しかし、DXの時代において情シス部門は企業の成長を牽引する「プロフィットセンター」としての役割を担う必要があります。

 この変革により、顧客体験の向上、業務プロセスの最適化、新しいビジネスモデルの創出など、企業価値を直接的に向上させる成果を生み出すことが可能になります。
また、データ活用による意思決定の高度化や働き方改革の推進など、組織全体の生産性向上にも大きく貢献できるのです。

2.IT企業の情シス部門が直面するDX推進の現実的課題​

 DX推進の必要性は理解していても、実際に取り組もうとするとさまざまな壁に直面するのが現実です。
日常業務に追われる中でこれらの課題を整理し、優先順位をつけて対処することが成功への近道となります。

情報システム部門の課題については、以下の記事もあわせてご覧ください。
「情シス(情報システム部門)の課題とは?現状と役立つ解決策を紹介」

2-1.​​​​リソース制約下での優先順位付けの難しさ

 適切なリソース配分で、既存システムの運用管理とDX推進を両立させる必要があります。
特に日常的なシステム障害対応やユーザーサポートに時間を取られ、戦略的なDX業務に集中できない状況が続きがちです。
また、DX推進には専門的なスキルや知識が必要ですが、社内にそうした人材が不足している場合も多く、外部パートナーとの協業や人材育成に時間とコストがかかります。

2-2.​​レガシーシステムとの共存問題

 多くの企業では長年にわたって構築されたレガシーシステムが事業の根幹を支えているケースが多く、これらのシステムを維持しながら新しいデジタル技術を導入する必要があります。
システム間の連携やデータ統合の複雑さがDX推進のスピードを制約する要因となっています。

2-3.​​経営層との認識ギャップ

 経営層からはDX推進への期待が高まる一方で、現場の実情や技術的な制約への理解が十分でない場合があります。
「すぐに効果が出るはず」「他社と同じことをすれば成功する」といった認識により、現実的でないスケジュールや予算設定がなされ、情シス部門が板挟み状態に陥るケースも少なくありません。

3.情シス DX推進を成功に導く5つの戦略的ステップ​

 情報システム部門がDXを成功させるためには、段階的かつ戦略的なアプローチが重要です。
以下の5つのステップに沿って進めることで、現実的かつ効果的なDX推進が可能になります。

3-1.ステップ1:現状分析と戦略的ビジョンの策定

 まずは自社の現状を客観的に分析し、DX推進の方向性を明確にします
既存システムの棚卸し、業務プロセスの可視化、社内のデジタルリテラシー評価を実施し、DX推進の起点となる基盤情報を整理します。

 同時に、経営戦略と連動したDXビジョンを策定し、3年から5年後の目指すべき姿を具体的に描きます。
このビジョンは経営層との合意形成の基盤となり、部門内外での推進力の源泉となります。

3-2.​​ステップ2:コア業務の効率化とリソース創出

 DX推進のためのリソースを確保するため、既存業務の効率化を図ります。
定型的な運用業務の自動化、外部委託の活用、業務プロセスの見直しなどにより、戦略的業務に充てる時間を創出します。
特にルーチン化可能な業務については、専門事業者への委託を検討することで、社内リソースをDX推進に集中させることができます。

 例えば、PCトラブル対応やソフトウェアサポートなどの定型的なヘルプデスク業務は、下記のような専門サービスへの委託が効果的です。
OA環境ヘルプデスクサービス|サン・エム・システム株式会社

3-3.​​ステップ3:段階的なデジタル化の実行

 一度にすべてを変えるのではなく、影響範囲と効果を考慮した段階的なアプローチを取ります。
まずは社内の業務効率化から始め、成功事例を積み重ねながら徐々に顧客向けサービスやビジネスモデルの変革に発展させていきます。
クラウドサービスの活用、ローコード・ノーコードツールの導入、APIエコノミーの活用など、導入しやすい技術から始めることで、リスクを抑えながら確実な成果を得ることができます。

3-4.​​ステップ4:データ活用基盤の構築

 DXの核となるデータ活用基盤を整備します。
散在するデータの統合、データ品質の向上、分析環境の構築を通じて、データドリブンな意思決定を支援する基盤を作り上げます。
BI ツールやダッシュボードの導入により、経営層や各部門が必要な情報にリアルタイムでアクセスできる環境を整備し、組織全体のデジタル化を促進します。

3-5.ステップ5:継続的改善と組織変革の推進

 DX推進は一度の取り組みで完了するものではありません。
継続的な改善サイクルを構築し、技術の進歩や事業環境の変化に対応できる柔軟な組織体制を整えます。

 このステップでもっとも重要なのは、組織全体の意識変革です。
経営層にはDXが新たな価値創造と競争優位性の源泉であることを理解してもらい、長期的な視点での投資継続への合意形成を図ります。
現場の従業員に対しては、DX推進が業務の効率化や働きやすさの向上につながることを実感してもらい、変革への積極的な参画を促進することが大切です。

 こうした意識変革を基盤として、定期的な効果測定、ユーザーフィードバックの収集、新技術動向の調査などを通じて、常に最適化を図りながらDXを進化させていきます。
同時に、社内研修や勉強会の開催により組織全体の変革対応力向上に継続的に取り組み、DXを支える人材基盤を強化していくことが重要です。

4.DX推進において情シス部門が果たすべき役割​

 DX時代の情報システム部門には、従来の技術的サポート役を超えた、より戦略的で能動的な役割が求められます。
これまでの受動的な立場から脱却し、自らが変革の起点となって組織を牽引していく、新しいマインドセットへの転換が必要です。

4-1.デジタル戦略の立案と推進リーダー

 情シス部門は単にシステムを構築・運用するだけでなく、企業のデジタル戦略を立案し、その推進をリードする役割を担います。
最新のデジタル技術動向を把握し、自社のビジネスにどう活用できるかを検討し、具体的な提案を行います。

 経営層とのコミュニケーションでは、技術的な詳細ではなくビジネス価値に焦点を当てることが重要です。
DXの取り組みがもたらす売上向上やコスト削減効果を定量的に示し、ROIやKPIを設定して定期的に進捗を報告することで、継続的な投資と支援を確保できます。

4-2.社内のデジタル変革推進エージェント

 各部門のデジタル化を支援し、組織全体の変革を促進する推進エージェントとしての役割も重要です。
部門固有の課題を理解し、適切なデジタルソリューションを提供することで、全社的なDXを加速させます。
変革に対する抵抗や不安を軽減するため、丁寧なコミュニケーションと段階的な導入計画により、スムーズな変革を実現します。

4-3.パートナーシップとエコシステムの構築

 内製ですべてを対応するのではなく、外部パートナーとの戦略的な協業関係を構築し、より効果的なDX推進を実現します。
ベンダー選定、契約管理、品質管理などを通じて、自社に最適なデジタルエコシステムを構築します。

5.実践的なDX推進のためのツールと手法

 DX推進を効率的に進めるためには、適切なツールと手法の選択が重要です。
限られたリソースから最大の効果を得るには、自社の現状や目標に合わせて技術を戦略的に組み合わせ、段階的に導入していくことが成功のカギとなります。
企業の特性に適したアプローチを紹介します。

5-1.​​ローコード・ノーコードプラットフォームの活用

 効率的な開発を求める企業では、ローコード・ノーコードプラットフォームの活用が効果的です。
専門的なプログラミング知識がなくても、業務アプリケーションやワークフローシステムを迅速に構築できます。

 これにより、ビジネス部門のニーズに素早く対応し、スモールスタートでDXを推進することが可能になります。
ローコード開発については、以下の記事もあわせてご覧ください。
「ローコード開発とは? 注目される背景とDX推進への有効性について解説」

5-2.クラウドサービスとAPIエコノミーの活用

 オンプレミスでのシステム構築にこだわらず、クラウドサービスやSaaSを積極的に活用します。
初期投資を抑えながら、最新の機能やセキュリティを享受できます。
また、API連携により既存システムと新しいクラウドサービスをシームレスに統合し、段階的なシステム更新を実現できます。

    5-3.クラウドサービスとAPIエコノミーの活用

     大規模なウォーターフォール開発ではなく、アジャイル開発手法を採用することで、変化に柔軟に対応しながら価値を迅速に提供できます。
    DevOpsの考え方を取り入れ、開発から運用までのサイクルを最適化することで、継続的な改善と迅速な価値提供を実現します。

    アジャイル開発について詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。
    「アジャイル開発のメリットとは? DX推進担当者が知るべき導入効果と組織変革への影響」

      6.情シス DX推進で陥りがちな失敗パターンと対策

       多くの企業が経験する典型的な失敗パターンを事前に把握し、適切な対策を講じることで、DX推進の成功確率を高めることができます。
      特に情報システム部門は技術への理解が深いからこそ、かえって陥りやすい盲点があり、これらの失敗パターンを知ることで貴重な時間とリソースの浪費を防ぐことが可能になります。

      6-1.​​技術先行で始めてしまう失敗

       最新技術の導入に注力するあまり、ビジネス課題の解決という本来の目的を見失ってしまうケースです。
      「AI導入が目的化」「クラウド移行自体が目標」といった状況に陥り、実際の業務改善や売上向上につながらない結果となってしまいます。
      技術選定の前に「何を解決したいのか」「どんな成果を求めるのか」を明確に定義することが重要です。

      6-2.全社一律の変革を急ぎすぎる失敗

       一度にすべての部門や業務を変革しようとして、組織の混乱や抵抗を招くケースです。
      変革への不安や既存業務への執着から現場の反発が生まれ、DX推進が頓挫してしまいます。
      変革の必要性を丁寧に説明し、小さな成功体験を通じて変革のメリットを実感してもらうことで、組織全体の理解と協力を得ることが重要です。

      DX戦略の策定から段階的な実行計画まで、専門家による支援をご検討の方は豊富な知見と実績を持つ当社のDXアドバイザーにご相談ください。
      経営ミッションを実現する「伴走型」DXアドバイザーサービス

        6-3.内製にこだわりすぎる失敗

         すべてを内製で対応しようとして、スピードと品質の両方を犠牲にしてしまうケースです。
        コア業務は内製し、ノンコア業務は外部パートナーを活用するという戦略的な判断が重要です。

        ノンコア業務については、以下の記事もあわせてご覧ください。
        「業務改善の鍵を握るノンコア業務とは?効率化のメリットや方法を徹底解説」

          7.外部パートナーとの効果的な協業体制

           DX推進では、限られた内部リソースを補完する外部パートナーとの協業が成功のカギとなります。
          しかし、単なる外注や丸投げではなく、自社の核となる部分は内製で維持しながら、外部の専門性を戦略的に活用する「選択と集中」のバランスが重要で、この判断を誤ると期待した成果を得られない結果となります。

          7-1.​​戦略的パートナーシップの構築

           単なる発注先ではなく、長期的なビジョンを共有し、共に成長していくパートナーとしての関係を構築します。
          相互の強みを生かし、Win-Winの関係を築くことで、より効果的なDX推進が可能になります。

          7-2.内製と外部委託の最適な組み合わせ

           コア業務と戦略的に重要な領域は内製を維持し、定型業務や専門性の高い領域は外部委託を活用するという明確な役割分担を行います。
          これにより、限られたリソースをもっとも価値の高い業務に集中させることができます。

          外部委託の活用について詳しくは、下記もご覧ください。
          「ITアウトソーシングとは?基礎からメリット、注意点や事例まで詳しく解説」
          「中小企業のための情シス代行アウトソーシングサービス完全ガイド ~導入から活用のポイントまで~ 」

            8.​​​​まとめ:持続可能なDX推進体制の構築に向けて

             情報システム部門がDXを成功させるためには、以下の要素を組み合わせた総合的なアプローチが重要です。
            明確なビジョンと段階的な推進計画の策定、既存業務の効率化によるリソース創出、適切な技術選択と外部パートナーとの協業、そして継続的な改善サイクルの構築。
            これらを実現することで、限られたリソースの中でも効果的なDX推進が可能になります。

             DX推進は単発の プロジェクトではなく、継続的な組織変革の取り組みです。
            短期的な成果を積み重ねながら、長期的な競争優位性を構築していくことが重要です。

             情報システム部門の運用業務効率化によるリソース創出をお考えの方は、専門性の高いヘルプデスクサービスの活用をご検討ください。
            定型業務を専門スタッフに委託することで、DX推進などの戦略的業務により多くの時間とリソースを投入できる環境を実現できます。
            OA環境ヘルプデスクサービス|サン・エム・システム株式会社

             また、DX推進を効果的に進めるためには、専門家のサポートを受けることも有効な選択肢となります。サン・エム・システムのDXアドバイザーサービスは、豊富な業界知見と実践経験を生かし、戦略立案から実行支援までお客様のDX推進を包括的にサポートいたします。
            経営ミッションを実現する「伴走型」DXアドバイザーサービス


            【この記事を書いた人】
            サン・エム・システムコラム編集部でございます。

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