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ローコード開発とは? 注目される背景とDX推進への有効性について解説

ローコード開発は、業務アプリケーションの開発を容易にする技術です。コードの記述を最小限とすることで、高度なスキル人材がいなくても必要なアプリケーションを開発できるようになります。ローコード開発は、IT人材の不足や開発期間の短縮といった企業の課題を解決し、DX推進に貢献します。今回は、ローコード開発の基本とほかの開発手法との違い、メリットやデメリット、おすすめの開発ツールを紹介します。
IT人材について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参考にしてください。
「IT人材とは?必要なスキルや採用・育成方法をわかりやすく解説」
- ローコード開発ツールを検討している方
- ローコード開発に興味のある方
- システム開発に課題を感じている方
1.ローコード開発とは
ローコード開発とは、ソフトウェア開発において、ソースコードを極力書かずに、GUI(Graphical User Interface)を用いて開発する手法です。プログラムコードを最小限に抑えることで、高度な技術を必要とせずに開発が可能という特徴があります。
実際の開発には、ローコード開発ツール(ローコード開発プラットフォーム)が用いられます。ローコード開発ツールとは、あらかじめ用意されたコンポーネントを組み合わせてアプリケーションを開発するためのソフトウェアで、多種多様なサービスが提供されています。
- ローコード開発ツールの基本的な仕組み
ローコード開発ツールの画面上で、コンポーネントをドラッグアンドドロップして配置します。
コンポーネントは、ボタンを押すだけで一定の処理が行われる機能が用意されているため、あらためて定義づけの処理をする必要がありません。
開発者は、コンポーネントの配置や設定を変更することで、アプリケーションの機能を実装できます。
2.ローコード開発が注目される背景
ローコード開発が注目される背景には、以下のような社会変化や企業のニーズが理由として存在します。
2-1.「2025年の崖」問題への対応
「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表したDXレポートで警鐘を鳴らした問題で、既存のレガシーシステムの複雑化・ブラックボックス化により、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が発生する可能性があるとされています。多くの企業では、事業部ごとに構築されたシステムが全社横断的なデータ活用を阻害し、DX推進が思うように進まないのが現状です。
ローコード開発は、この問題を解決する有効な手段として注目されています。視覚的なインターフェースにより開発期間を大幅に短縮でき、IT人材不足の状況下でも現場担当者が主体となって開発を進められます。さらに、既存システムとの連携機能により段階的なシステム刷新が可能で、業務への影響を最小限に抑えながら「2025年の崖」を回避できます。
2-2. IT環境の目まぐるしい変化
現在はクラウドコンピューティング、モバイル、IoT、AIなどの新たな技術が次々と登場し、ビジネスのあり方が大きく変化しています。これらの変化に対応するために、新しいアプリケーションを迅速に開発する必要がある一方で、高スキル人材の育成や確保には時間がかかるのが現状です。
2-3. 深刻化するIT人材の不足
経済産業省の調査によると、2030年までに40~80万人規模のIT人材不足が懸念されています。ローコード開発は、プログラミングスキルがなくてもアプリケーションを開発できるため、IT人材不足の解消に貢献できると考えられます。また、非IT部門の従業員でも開発に参加できることで、組織全体の開発生産性を向上させることが可能です。
2-4. 働き方、雇用形態の多様化
テレワークや副業・兼業の普及により、従来の企業内開発体制では対応が難しい状況になっています。ローコード開発は、場所や時間にとらわれずに開発作業を進められるため、多様な働き方にも対応できます。また、ビジネス部門や個人でもアプリケーションを開発できるため、組織の垣根を越えた柔軟な開発体制を構築できます。
2-5. レガシーシステムの問題
レガシーシステムは、保守や運用のコストが高く、新たな機能や技術の追加が難しいという課題があります。一方で、ローコード開発は、レガシーシステムを刷新する際に、既存のシステムを活用しながら新たな機能や技術を追加することができるため、これらの課題に対応することができます。
2-6. 技術やノウハウの獲得
外部にアプリケーション開発を丸投げしてしまうと、技術やノウハウが社内に蓄積されず、将来的に新たなアプリケーションの独自開発ができなくなるおそれが生じます。ローコード開発であれば、ビジネス部門や一般社員でもアプリケーションを開発できるため、技術やノウハウを社内に蓄積できます。これにより、継続的なシステム改善と組織のデジタル変革を推進することが可能になります。
3.ほかの開発方法との違い
- ノーコード開発
ソースコードを書くことなく、GUIを用いてアプリケーションを開発する手法です。あらかじめ用意されたコンポーネントを組み合わせるだけでアプリケーションを開発でき、コーディングする必要がありません。ローコード開発は、コンポーネントを組み合わせる手法は同じですが、必要最低限のコーディング作業が発生します。
- スクラッチ開発
ゼロからソースコードを書き起こしてアプリケーションを開発する手法です。高度なプログラミングスキルが要求される一方、自由度が高く、独自の機能を実現できます。
- パッケージ開発
既存のソフトウェアパッケージをカスタマイズしてアプリケーションを開発する手法です。ソースコードの記述が必要となる場合もありますが、スクラッチ開発よりも開発にかかる時間やコストを抑えられます。
主な開発方法の違いは、以下のとおりです。
項目 | ノーコード開発 | ローコード開発 | スクラッチ開発 | パッケージ開発 |
ソースコードの記述 | 不要 | 最小限 | 必要 | 必要 |
開発の難易度 | 比較的容易 | 比較的容易 | 比較的困難 | 中程度 |
開発の自由度 | 低い | 多少あり | 高い | 中程度 |
開発にかかる時間 | 短い | 短い | 長い | 中程度 |
開発にかかるコスト | 安い | 安い | 高い | 中程度 |
スクラッチ開発 パッケージ開発について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参考にしてください。
SaaS、PaaS、IaaSとは?定義や違い、サービスの例を紹介
4.ローコード開発のメリット・デメリット
ローコード開発を活用するメリットとデメリットを解説します。
4.1.ローコード開発のメリット
- 高度なプログラミングスキルがなくても開発が可能
あらかじめ用意されたコンポーネントを組み合わせてアプリケーションを開発するため、高いプログラミングスキルがなくても開発を行うことが可能です。
- 開発にかかる時間とコストを削減できる
コーディングが最小限ですむためバグが起こりにくく、開発にかかる時間とコストを削減しながら必要なアプリケーションを短期で作成できます。
- オリジナルに近いアプリケーションを簡単に開発できる
コンポーネントを組み合わせながらコードも追加できるため、ビジネスの変化に合わせたアプリケーションを迅速に開発できます。
- わかりやすい画面で修正も容易
GUIを用いた直感的な開発ができ、設計が「見える化」されるため、修正や機能追加が容易に行えます。
4-2.ローコード開発のデメリット
- 自由度が低い
コード記述による調整には限界があり、独自の機能を実現したい場合や、複雑なアプリケーションを開発したい場合には対応が困難です。
- 技術やノウハウの習得が必要
ローコード開発ツールの使い方を習得するには、ある程度のITリテラシーが必要です。ローコード開発ツールを利用する際には、事前に使い方を学ぶことが求められます。
5.おすすめのローコード開発ツール
おすすめのローコード開発ツールを紹介します。
5-1.Microsoft PowerApps
マイクロソフト社が提供しているローコードアプリ開発ツールです。
Webブラウザ経由で利用できるため、パソコンへのインストールが不要で自社インフラへの負荷がありません。
Microsoft 365のアカウントで利用でき、オフィスソフトのような使用感のため、なじみやすいのが特徴です。
サン・エム・システムでは、短期間でのPower Apps習得を可能にする「Power Appsトレーニング」を提供しています。詳しくは下記をご参照ください。
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5-2.Pega Platform
Web入力画面作成、帳票作成、データ集計などをローコードで作成できます。
作成したアプリケーションはパーツ化して再活用できるため、応用範囲が広いのが特徴です。
5-3.Magic xpa Application Platform
ひとつの開発手法で、Web、モバイル、RIA(Rich Internet Application)、クライアント/サーバーのアプリケーション開発が可能です。
カスタマイズ・変更への対応が比較的容易で、わかりやすいという特徴があります。
処理フローが標準化された業務アプリケーション特化型で、開発者による品質の不均衡が出にくいため、一般社員が開発する場合でも安心です。
5-4.Accel-Mart Quick
簡単な入力フォームから複雑なデータ連携が必要な業務アプリケーションまで、クラウド上でのWebアプリケーションの構築が可能です。
他システムとの連携が可能な柔軟なコンポーネントで業務の効率化を促進できます。
開発ツールについてより詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
SUNM Tech & Business Blog > ローコード
6.市民開発者(Citizen Developer)がもたらすDXの民主化
ローコード開発の普及により、従来IT部門が担っていたシステム開発を、業務部門の従業員自身が行える時代が到来しています。この「市民開発者」の登場は、企業のDX推進を根本から変革する可能性を秘めています。
6-1.市民開発者とは
市民開発者(Citizen Developer)とは、IT部門以外の業務部門に所属しながら、ローコード・ノーコードツールを活用してアプリケーションやシステムを開発する従業員のことです。従来のシステム開発では業務部門が要件定義し、IT部門が開発を担当する分業体制でしたが、ローコード開発の普及により、業務を最も理解している現場の担当者自身が開発者となれるようになりました。
6-2.市民開発者が企業にもたらす変革
市民開発者は業務の現場にいるため、実際の業務フローや課題を深く理解しており、IT部門との間で発生しがちな要件の伝達ミスや仕様の齟齬を減らすことができます。また、現場担当者だからこそ気づく業務改善のアイデアを、すぐにアプリケーションとして形にできるため、イノベーションの創出につながります。さらに、市民開発者として活動することで、業務部門の従業員のITスキルとデジタル思考が向上し、組織全体のDXに対する理解と推進力が高まります。
6-3.市民開発者育成のポイント
市民開発者として適性が高いのは、業務に精通し、改善意識が強く、新しいツールや技術への学習意欲がある従業員です。育成においては、簡単な業務アプリケーションから始めて段階的にスキルアップを支援し、社内研修やメンター制度を活用することが効果的です。また、市民開発者が作成したアプリケーションの品質管理やセキュリティチェックについては、IT部門との緊密な連携体制を構築し、開発ガイドラインの策定や定期的なレビュー体制を整備することで、品質とガバナンスを両立できます。
7.まとめ:ローコード開発ツールの活用でアプリケーション開発の課題を解決
DX推進においては、業務効率を向上させるために新たなアプリケーションを必要とする場面も少なくありません。しかし、IT人材が不足する状況下で、コードを一から記述する手法を採用するのは困難です。ローコード開発は高度なスキルを必要とせず、短期間で業務に必要なアプリケーションの開発を可能にします。DXを進めていくうえでは、現実的で有効な策となります。
一方で、ローコード開発ツールをどのように選ぶべきかわからない、自社のDX推進の環境についての課題がつかめていないといった悩みを持つ企業担当者も多いでしょう。
DXアドバイザーでは、DXに関連する困りごとについて幅広いサポートを提供しています。自社のDX推進に不安のある場合には、ぜひご活用ください。
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【この記事を書いた人】
サン・エム・システムコラム編集部でございます。
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