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日本におけるDXの状況とは?事例や成功のポイントも解説

日本におけるDXの状況とは?事例や成功のポイントも解説
DX

 日本におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展は確かですが、同時に課題も浮き彫りになってきました。デジタル技術の導入が競争力向上や効率改善をもたらす一方、日本では思うように進んでいないのが現状です本記事では、IPAが発行したDX白書の内容を参考に日本におけるDX取り組み状況を解説するとともに、先進的な取り組み事例についても紹介す。

  • DXの重要性について関心をお持ちの方
  • 日本におけるDXの現状について知りたい方 
  • 事例や成功のポイントをお探しの方

1.日本におけるDXの重要性

DXとは、デジタル技術を活用して業務や社会のあり方を変革する取り組みを指します。DXは競争力向上や経済成長の鍵であり、ビジネスや行政、教育など幅広い分野において非常に重要なテーマです。 

近年の日本では、「2025年の崖」への対応、レガシーシステムからの脱却、労働力人口の減少などさまざまな課題を抱えています。「2025年の崖」とは、経済産業省のDXレポートに指摘された問題です。複雑化した古いシステムを刷新できず、レガシーシステムとして残存した場合、DX推進が遅れ経済損失が2025年以降年間最大12兆円発生するといわれています。 

日本がこうした問題を解決し、国際社会での競争力を維持するための方法として、DXの重要性が高まっています。 

参考:経済産業省 

DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(平成30年97日) 

2.日本におけるDXの現状

日本におけるDXは、デジタル技術の導入が進み、企業や公共機関などで進行中です。大企業を中心に業務効率化や新ビジネスモデルが広がりつつあり、中小企業も参加し始めています。一方で、2025年問題や人材育成などについての課題も顕在化しています。

ここでは、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公表している「DX白書2023」から日本におけるDXの取り組み状況について解説します。

2-1.DXへの取り組みは広がったが依然として大きい日米格差

日本で全社・部門・部署のいずれかで、DXに取り組んでいる企業の割合は2021年度の調査では55.8%でした。翌年の2022年度の調査では69.3%に増加し、米国における2022年度調査の77.9%に近づいています。 

ただし、全社戦略に基づき、全社・部門で取り組んでいる企業の割合を比較すると、米国が68.1%であるのに対して、日本は54.2%と差が開いている状況です。部署ごとの個別の取り組みから、全社戦略に基づく、全社・部門の取り組みへとステップアップする必要がありそうです。

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出典:情報処理推進機構(IPA)|DX白書2023 

DXの取り組みにおいて、日本で「成果が出ている」と回答した企業の割合は前回調査49.5%から2022年度調査は58.0%に増加しました。米国では89.0%の企業が「成果が出ている」と回答しており、成果についても日米差は大きい状況です。

2-2.大企業が先導

DX推進には、一定の投資や人材、ノウハウを必要とするため、企業規模によって差が出ているのが現状です。DX白書でも、「売上規模が大きくなるほどDXに取組んでいる企業の割合も高くなる」という傾向が確認されています。 

大企業では4割強が取り組んでいるのに対して、中小企業では1割強にとどまっています。大手企業のほうがDXの導入を進めているケースが多いようです。

2-3.取り組み状況に産業別の格差

いずれの業種においても、2021年度と2022年度を比較すると、DXに取り組んでいる割合が増加しています。特に「流通業、小売業」では、2021年度調査の54.1%から、2022年度調査は73.1%に増加しました。他方、DXの取組割合が最も低い「サービス業」は13.1%の増加にとどまり、2022年度調査は55.4%でした。 

また、総務省の企業向けアンケート調査「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究(2021年3月)」によると、DXに取組んでいる企業の割合は「情報通信業」「金融業、保険業」が他産業と比較して高いという結果が出ています。一方、「医療、福祉」や「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」では遅れが見られます。

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出典:情報処理推進機構(IPA)|DX白書2023

2-4.大都市と地方都市で取り組み状況に差異

東京23区に本社のある企業の4割近くがDXの取り組みを実施していますしかし、政令指定都市、中核市、その他市町村と、都市の規模が小さくなるにつれて、DXの取り組み低くなっている傾向です都市部ほど投資余力のある企業や労働力となり得る人材が集約、必要となるDX人材を確保したりDX推進のノウハウを共有したりしやすいことで差異が生じていると推察されます 

2-5.「デジタル化」「業務効率化」は進むがDXに至らず

日本においても、「アナログ・物理データのデジタル化」(デジタイゼーション)と「業務の効率化による生産性の向上」(デジタライゼーション)の取り組みでは、成果が出ている割合が約80%と、米国との差がなくなってきています。 

しかし、DXの最終目的である「新規製品・サービスの創出」「ビジネスモデルの変革」については依然20%台と低く、米国の70%前後という数値とは差があるため、さらなる取り組みが必要です。

 

デジタル化(デジタイゼーション・デジタライゼーション)について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参考にしてください。 

DXとデジタル化の違いとは?取り組みに向けて理解しておきたい基本の考え方 

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出典:情報処理推進機構(IPA)|DX白書2023

2-6.経営層のITに対する見識不足

DX推進には、経営層の積極的な関与と見識が求められ、経営層、業務部門、IT部門の協働が組織作りに必要です。 

IT分野に見識がある役員ついて、3割以上の割合を日米で比較すると、2022年度調査では日本が27.8%、米国が60.9%でした。日本は2021年度調査から割合は増加しているものの、米国と比較すると2倍以上の差があります。日本の経営層のITに対する理解が不十分であることが、DX推進の阻害になることが懸念されています。

DX推進に必要な人材育成について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参考にしてください。 

DX研修とは?未来に向けた企業成長の軸となる人材を育成するために

2-7.予算確保の問題

DX推進のための予算確保の状況として、米国は「年度の予算の中にDX枠として継続的に確保されている」が40.4%と最も割合が高いという結果です。対して、日本で最も割合が高いのは「必要な都度、申請し、承認されたものが確保される」で45.1%でした。 

DXは、中長期的に取り組むべき施策であり、一過性ではない継続的な予算確保が重要であることを考慮すべきです。

2-8.デジタル人材の不足

人材の「量」については、日本では「大幅に不足している」が2021年度調査の30.6%から2022年度調査では49.6%と増加しています。「やや不足している」は、2021年度調査の54.2%から2022年度調査では33.9%と減少しました。つまり、「やや不足している」から「大幅に不足している」へと変化しています。DXを推進する企業が増えることで、人材の「量」の不足を実感することが増えているようです。 

「質」についても「大幅に不足している」は前回調査30.5%から2022年度調査は51.7%に増加しました。「やや不足している」に関しては、「量」についての調査と同様に減少しています。

DXに取り組む企業の割合が増加した結果、DXの推進に必要な人材に対するニーズが増え、人材の質・量ともに不足しています。また、DXを推進する人材を評価するための基準がない企業が日本では8割弱を占め、DXを推進する人材施策が不十分な状況です。

2-9.4割強の企業で残るレガシーシステム

DXレポート指摘され「2025年の崖」への取り組みも課題です。レガシーシステムの存在はDX推進の足かせになり、成長力が阻害されるおそれがあります半分以上レガシーシステムが残っている企業の割合は米国の22.8%に対して、日本は41.2%です。日本企業におけるレガシー刷新の遅れがうかがえます 

2-10.データ利活用

データ利活用の状況は進んでいるものの、取り組む予定がない企業の割合が約20%と高く、取り組み状況の二極化が見えます売上増加やコスト削減など成果の創出にはまだ至っておらず、成果の測定もしていない企業が5割です 

2-11.最新技術の活用

AI・IoTの利活用は米国企業と比べて遅れており、先端技術の利活用が遅れています。導入目的において日本は業務効率化にとどまる企業が多いため最終的なDXの目標である顧客価値の向上やビジネスモデルの変革を目指取り組みに発展させる意識が求められます 

3.日本におけるDXの取り組み事例

日本においても先進的なDXの取り組みを行っている企業もあります。新たなビジネスモデルを確立する成功事例を2つ紹介します。

3-1.日本交通

タクシー事業を展開する日本交通では、タクシーの需要予測に課題感持っていました。地域や時間、イベントによって変化するタクシー需要を把握できないと、収益損失や業務効率悪化につながるため、その把握が長年の課題でした。そこでAIによって、「地域」「時間」「時期」「交通状況」「気象状況」「イベント情報」などのビッグデータを分析するITシステムを開発し需要予測の精度を高め、タクシー配車の最適化に成功しました。 

3-2.ソニー損害保険

ソニー損害保険では、GOOD DRIVEアプリ」無料提供しいます。AIやセンシング、クラウドコンピューティングなど用いアプリで収集したデータから、ドライバーの運転傾向を測定事故リスクの度合いを「運転スコア」として算定します。運転スコアに基づいた運転アドバイスをアプリに表示したり、事故リスクが低いと判断されると保険料のキャッシュバックったりするなど新たな顧客体験を提供しています。

4.日本におけるDX成功のためのポイント

日本においてDXを成功させるためのポイントは以下のとおりです。

4-1.経営陣のリーダーシップとビジョン

経営トップからのコミットメントと明確なビジョンが不可欠です組織全体がDXの重要性を理解し、共有することが成功の基盤です

4-2.ビジョンや経営戦略の明確化

経営陣はDXによってどのような変革を実現したいのか、どのような成果を得たいのか、ビジョンや経営戦略を明確にし、会社全体に示すことが大切です

4-3.DX人材の確保と育成

DXの推進には、社内で中心的な役割を負う専門的なスキルを持ったDX人材の確保が欠かせません。 

従業員全体のデジタルスキル・知識を向上させることも必要です。トレーニングや教育プログラムを提供し、デジタルツールの使い方や新しい技術の理解を進めることで、DXに必要な知識やスキルを高めましょう。

まとめ:日本のDX進捗状況を知り変化の必要性を認識しよう

日本のDXは確実に前進していますが、決してスムーズに進行しているとはいえないでしょう。DX推進には大きな変革が伴うことから、乗り越えなければならない課題は少なくありません。経営者のリーダーシップや人材育成などDX成功のポイントを押さえて、継続的な変革への取り組みを進めていくことが必要です。

外部の専門家のアドバイスを積極的に取り入れることもDX推進には有効です。自社のDX実現に課題を抱えている企業担当者様は、伴走型DXアドバイザーサービスを提供するサン・エム・システムへご相談ください。 

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【この記事を書いた人】
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