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DXとデジタル化の違いとは?取り組みに向けて理解しておきたい基本の考え方
DXという言葉が、社会のあらゆる分野で日常的に聞かれるようになってきました。
DXに向けての取り組みについても加速している様子がうかがわれます。
しかし、いまだにDXの本質が正確につかめておらず、デジタル化との違いが曖昧になっているケースも少なくありません。
今回は、DXとデジタル化の違いを明確にし、具体的な取り組みに役立つ情報を解説していきます。
- DXとデジタル化の違いをしっかりと押さえておきたい方
- DX化に向けてまずはデジタル化に取り組みたい方
- DXの着実な進め方を知りたい方
1.DX推進に必要な2つのデジタル化とは?
1-1.DXとデジタル化の違い
DXは"Digital Transformation"(デジタル・トランスフォーメーション)の略称で、組織やビジネスの基本的な機能、プロセス、およびビジネスモデルを根本的に変革する取り組みを指します。
DXの主な目的は、デジタル技術とイノベーションを活用して、競争力を高め、顧客体験を改善し、新たな成長機会を創出することです。
DXの取り組みの範囲としては、新しい技術の導入、組織文化の変革、プロセスの最適化、データの活用、顧客とのエンゲージメントの向上など、幅広い活動が含まれています。
一方、デジタル化は、アナログや物理的な形式からデジタルデータへの変換を指します。
これは、情報を電子的なフォーマットに変換することによって、データの記録、処理、共有を効率化し、アクセスや検索の容易さを向上させることを目的としています。
デジタル化の対象には、文書類や写真だけではなく、音声、ビデオなど、さまざまなメディアがあり、デジタル化には、それらをアナログからデジタルに変換することも含まれます。
両者の違いは、DXは組織やビジネスの大規模な変革を促進する総合的な取り組みであり、デジタル化は情報の形式を変更して情報処理を改善する個別のプロセスです。
DXの過程においてデジタル化が含まれる場合がありますが、デジタル化はDX全体を代表する取り組みではありません。
デジタル化はDXのひとつの手段、一部の過程にすぎないのです。
1-2.デジタイゼーションとデジタライゼーション
DXに必要なデジタル化には、2つの種類があります。
「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」です。
「デジタイゼーション(Digitization)」は、既存の紙のプロセスを自動化するといった、物質的な情報をデジタル形式に変換することを指します。
総務省によるデジタイゼーションの定義は、以下のとおりです。
"既存の紙のプロセスを自動化するなど、物質的な情報をデジタル形式に変換すること"
具体的には、紙媒体やアナログ情報をデジタルデータとして扱える状態にすることを指し、社内の業務プロセスそのものは変化させずに、業務の効率化を目指して、使用するメディア類の中身の置き換えを行います。
一方の「デジタライゼーション(Digitalization)」は、経済産業省の定義では"個別の業務・製造プロセスのデジタル化"とされています。
個別の業務やプロセスを改善するためにデジタルテクノロジーを導入し、プロセスの自動化や、デジタルツールの導入などを行うことを意味します。
顧客をはじめとするステークホルダーに対してサービスを提供するために、より良い方法を構築することが目的です。
デジタイゼーションは、社内の業務効率化のためアナログ情報をデジタル化するだけの作業であり、それだけでは直接DXにつながるわけではありません。一方、デジタライゼーションは、デジタル技術を活用して社内外のビジネスプロセスを変革することを目指すもので、デジタイゼーションの先を行く取り組みになります。
2.DX推進の第一歩はデジタイゼーション
デジタイゼーションが必要であるのは、DX推進の前提として業務上取り扱う情報のデジタル化が不可欠であるためです。
DXを推進していくうえでは順番にステップを踏んでいく必要があると考えると、デジタイゼーションはその入り口と位置付けられます。
一般的な概念としては、デジタイゼーション→デジタライゼーション→デジタルトランスフォーメーション(DX)の順となると考えてよいでしょう。
デジタル化ができていないと、情報の共有やシステムの導入、データによる処理が進められません。アナログデータのままではDXに着手できないため、早急なデジタイゼーションの促進が求められます。
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3.デジタイゼーションとデジタライゼーションの取り組み例
デジタイゼーションとデジタライゼーションのイメージをつかむために、具体的な取り組みの例を紹介します。
3-1.デジタイゼーションの具体的な例
・文書のデジタル化
古い文書、書類、契約書類などをスキャンして、デジタルフォーマット(PDFや画像)に変換します。
システムで扱えるデジタルデータに変換することで、保存や共有が可能な情報になります。
書庫の整理、スペース・管理負担を軽減し、検索性を向上させる効果も期待できるでしょう。
・ワークフローシステムの導入
紙による決裁書類の回覧を廃止し、ワークフローシステム内で実施するようにします。
承認者の不在、遠隔地にいる社員などに対応でき、決裁、意思決定のスピード化が実現可能です。
・電子契約の導入
紙の契約書類と押印のスタイルから、電子契約サービス活用へ移行します。
印紙税の削減や事務労力・事務経費の削減、契約締結までのリードタイムの短縮といった効果が得られます。
また、保管・管理の効率化とコスト削減、リモートワーク対応が容易になることもメリットです。
3-2.デジタライゼーションの具体的な例
・ビジネスプロセスのデジタライズ
上記の施策を含めたペーパーレス化の推進により、企業が紙ベースのプロセスからデジタルへシフトすることでビジネスの在り方全体を変えていきます。
業務の効率化やエラーの減少を図り、すべての事務処理においてのスピード化を実現します。
・オンライン販売プラットフォーム
従来の実店舗からオンライン販売に移行することも、デジタライゼーションの一例です。
商品情報や取引がデジタルプラットフォーム上で行われ、顧客はインターネットを通じて製品を購入できるようになります。
・サブスクリプション型ビジネス
レンタルサービスから、オンラインプラットフォームを活用したサブスクリプション型サービスに移行するといった手法も、デジタライゼーションの一環です。
顧客の利便性を図ると同時に、長期的な利益獲得にも貢献できます。
・デジタル医療記録
限られた業界の例では、医療機関が患者の健康記録を紙のカルテではなく電子的な形式で管理するといったことも、デジタライゼーションの一例です。
関係各所間での医療データの共有が容易になり、患者の利便性向上に寄与します。
4.DX推進におけるデジタル化の重要性
DXの推進にあたり、デジタル化は欠かせない取り組みです。
ここでは、デジタル化が重要である理由を解説します。
・時代に合わせた組織文化の変革
デジタル化はDX推進のベースとなる状態をつくり、業務対応の柔軟性やイノベーションを促進する役割を果たします。
情報共有やリアルタイムでの伝達、多様な働き方への対応を促し、従来の階層的な構造から、柔軟性の高い組織文化への転換を進めることが可能です。
デジタル化によって多様なコミュニケーション形式が加えられ、新たなアイデアや方法の採用が容易になるでしょう。
・ビジネスプロセスの最適化
デジタル化によって、従来のビジネスプロセスを見直し、合理化および効率化することができます。
ワークフローシステムやデジタルツールの導入、RPA(Robotics Process Automation)による自動化は、タスクの手動処理や繰り返し作業を減少させます。
個人の業務負担を軽減しながら、生産性の向上が実現します。
・データの活用と分析
デジタル化によって蓄積されるデータは、価値ある企業資産となります。
データの収集・分析によって顧客の行動や傾向を把握し、意思決定の根拠となる情報を提供します。
ビッグデータ分析やAIの活用により、新たな洞察を得ることができ、戦略的な判断を行うことも可能です。
・新たなビジネスモデルの創造
デジタル化の推進により、デジタルプラットフォームやオンラインサービスの提供など、企業のビジネスに新たな分野を開拓できる可能性が広がります。
・グローバル競争力の向上
デジタル化によって、業務の効率化が進めば、無駄な作業やコストを削減することができます。
企業は顧客や市場ニーズに対応した製品やサービスの開発、品質向上により多くの時間や資源を投入することができます。
これは、国内外の競合他社に対する競争力の強化につながるでしょう。
デジタル技術について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参考にしてください。
「DXにおける技術の種類とは?課題解決に役立つ情報を解説」
5.DXの実現にはデジタル化の着実な実施が不可欠
DXは変わり続ける時代に対応し、市場競争を勝ち抜く力と企業価値の向上を得るための取り組みです。
それに対して、デジタル化はそのプロセスのひとつにすぎません。
2つの違いを理解することで、目的と手段を取り違えることなく、着実なDX推進を実施できます。
まずはDXの入り口となるデジタル化に着手し、未来を見据えた組織やビジネスモデル変革を進めていきましょう。
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【この記事を書いた人】
サン・エム・システムコラム編集部でございます。