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SCS評価制度のよくある誤解6つ|対応を始める前に
SCS評価制度は現在も詳細が具体化されている段階にあるため、解釈が固まりきらず、思い込みが生まれやすい状況にあります。よく聞かれるのは「ISMSがあるから対応済み」「製品を導入すれば取れる」「中小企業には関係ない」「情シスに任せておけばいい」「取得すれば終わり」「まだ先の話」の6つです。いずれもそう考えるのは自然なことですが、実際の制度の枠組みとは少しずつずれています。
本記事では、SCS対応の検討を始めた企業からよく聞かれる6つの認識を取り上げ、実際はどうなっているのかを整理します。社内で「うちはもう大丈夫では」という声が出たときの説明材料としてもご利用いただけます。
※本記事は2026年9月時点で公開されている情報をもとに作成しています。SCS評価制度は現在も詳細が具体化されている段階であり、内容やスケジュールは今後変更される可能性があります。
- SCS評価制度をめぐってよく聞かれる6つの思い込み
- 既存のISMS・Pマークがどこまで活かせるのか
- 「製品を入れれば満たせる」が成り立たない理由
- 対応を始める前に押さえておきたい前提
- 社内で「うちはもう大丈夫では」という声が出ていて、答える材料が欲しい方
- SCS対応の検討を始めたばかりで、前提を確認しておきたい方
- 経営層や他部門への説明資料を用意している方
1. 「すでに対応できている」という誤解
まず多いのが、既存の取り組みでカバーできているはずだという認識です。実際に重なる部分はあるため、そう考えるのは自然なことです。ただ、そのまま置き換わるわけではありません。
1-1. 誤解1「ISMSやPマークを取っているから対応済み」
実際は、重なる部分はあるものの、そのまま置き換わるものではありません。
ISMS(ISO/IEC 27001)やプライバシーマークを取得している企業であれば、情報資産の管理、アクセス制御、従業員教育といった領域はすでに整備されています。これらはSCS評価制度の要求事項でも問われる部分であり、当然活かせます。
注意したいのは、要求事項の構成です。SCS評価制度の要求事項は、NIST CSF(サイバーセキュリティフレームワーク)の「統治」「識別」「防御」「検知」「対応」「復旧」の6分類に、「取引先管理」を加えた7つの分類で構成されています。この取引先管理と、経営層の関与にあたる統治の領域は、既存認証の運用だけでは埋まりにくい部分です。
なお、自動車業界と取引のある企業については、★3・★4が自工会・部工会ガイドラインのレベル1・レベル2に対応する形で整理されており、同ガイドラインの自己評価結果を活用できるよう連携が進められています。
ただし、ISMSやPマークとSCS評価制度の要求事項を対応づけた公式な資料が公表されているわけではありません。「ISMSがあるから★3は問題ない」と結論づけるのではなく、要求事項と自社の現状を実際に突き合わせる作業が必要です。
制度の全体像については、「SCS評価制度とは|★3・★4の違いと対象になる企業」で解説しています。
1-2. 誤解2「製品を導入すれば★は取れる」
実際は、特定の製品の導入が必須とされているわけではありません。
セキュリティ対策というと製品の導入を思い浮かべやすく、「これを入れれば要件を満たせる」という説明も見かけます。ただし評価基準の達成にあたって、特定のセキュリティ対策製品の導入が必須とされているわけではありません。要求事項・評価基準を満たす具体的な実装例をまとめた評価ガイド等は、これから公表される段階にあります。
むしろ確認したいのは、すでに導入しているツールで何ができるかです。Microsoft 365のように日常的に使っているサービスにも、使われていない機能が含まれていることは珍しくありません。新しい製品を検討する前に既存ツールの未活用機能を洗い出すほうが、コストを抑える近道になります。
加えて、製品を導入しても、運用して記録が残っていなければ評価の場面では確認されません。導入と運用は別の話です。この点は「大変なのは取得より運用|SCS対応でつまずく6つのこと」で詳しく整理しています。
2. 「自社には関係ない」という誤解
次に多いのが、対象や担当についての認識のずれです。
2-1. 誤解3「中小企業には関係ない」
実際は、規模ではなく取引上の立場で関わる制度です。
この制度は、取引先や委託先を経由した攻撃を防ぐことを目的としています。つまり、企業規模ではなく、サプライチェーンのどこに位置しているかで関わり方が決まります。
実際、発注者向けに「★4を求める受注者の基準案」が示されており、顧客システムの機微情報を扱う受託開発や運用保守などは該当しやすい領域とされています。規模が小さくても、取引先にとって重要な役割を担っていれば対象になり得ます。
なお、★1・★2にあたるIPAの「SECURITY ACTION」については、★3・★4の取得を検討する企業にとっての準備段階として活用することが案内されています。まったく何もない状態から始めるわけではありません。
自社が対象になるかどうかの考え方は、「SCS評価制度とは|★3・★4の違いと対象になる企業」で詳しく整理しています。
2-2. 誤解4「情シスに任せておけばいい」
実際は、統治と取引先管理は情報システム部門の権限外にあります。
セキュリティの話だから情報システム部門の仕事、という整理は自然に見えます。ただ、前述のとおり要求事項には「統治」と「取引先管理」が含まれています。
統治にあたるのは、方針の承認、リスクをどこまで受け入れるかの判断、予算の確保といった経営層の領域です。取引先管理は、契約内容の見直しや委託先への確認依頼を含み、購買・調達部門や法務との連携が必要になります。どちらも情報システム部門の権限では動かせません。
情報システム部門の担当者一人に寄せると、自分の権限が及ばない領域について他部門に依頼して回ることになり、決裁のプロセスで止まります。必要なのは大きな専任チームではなく、役割それぞれに担当が割り当たっていることです。
体制の考え方は「SCS対応、結局だれがやるのか|必要な体制とスキル」で解説しています。
3. 「一度やれば終わり」という誤解
最後は、時間軸についての認識です。
3-1. 誤解5「取得すれば終わり」
実際は、維持できていることを示し続ける制度です。
評価を受けるのは一時点のことですが、この制度は評価を受けた組織を台帳に登録・公開する仕組みであり、登録された水準を維持している前提で運用されます。
証跡の整備、ログの保管、資産と権限の棚卸し、委託先への確認、教育の記録。これらは一度そろえれば終わりではなく、状態を保ち続ける必要があります。特に人の出入りがあるたびに権限の変更が発生するため、入退社の手続きのなかに記録を残す仕組みが組み込まれていないと、半年もすれば台帳と実態がずれ始めます。
一度取得して終わりという前提で設計すると、次回に向けて毎回ゼロからやり直すことになります。逆に、初回整備の段階で運用まで見据えて設計しておけば、2回目以降の負荷は大きく下がります。
運用フェーズで何が起きるかについては、「大変なのは取得より運用|SCS対応でつまずく6つのこと」で6つのポイントに分けて整理しています。
3-2. 誤解6「まだ始まっていないから今は何もしなくていい」
実際は、制度の確定を待たずに進められる作業があります。
2026年8月に制度の基本規程が施行され、★3・★4の運用開始は2026年度末が予定されています。ただし申請受付の具体的な時期については解説によって記載に幅があり、確定した情報は経済産業省およびIPAの公式サイトで確認する必要があります。
そのため「時期がはっきりしてから動こう」と考えるのは無理のない判断です。ただ、ここで押さえておきたいのは、要求事項と自社の現状の差分を把握する作業は、制度の確定を待たずに進められるという点です。
そして、規程の整備や、記録が自然に残る運用づくりには時間がかかります。特に記録の仕組みは、作ってから実際に回り始めるまでに一定の期間が必要です。急ぐ必要はありませんが、待つ必要がない部分から手をつけておくと、制度が動き出したときに選択肢が広がります。
スケジュールの詳細は「SCS評価制度とは|★3・★4の違いと対象になる企業」にまとめています。
4. まとめ:6つに共通していること
6つの認識を見てきましたが、共通しているのは自社の現状を具体的に把握していないと判断できないという点です。
ISMSがどこまで使えるのかも、製品が必要なのかどうかも、自社が対象になるのかも、何から手をつけるべきかも、現状が見えていれば自然に答えが出ます。逆に現状が分からないままだと、どれも「たぶん大丈夫」か「たぶん大変」のどちらかにしかなりません。
なお、制度の細部は現在も具体化が進められている段階です。本記事の内容も2026年9月時点の公開情報に基づくものですので、判断の際は公式サイトで最新の情報をご確認ください。
支援を外部に依頼する場合の考え方については、「SCS支援会社の選び方|4タイプの特徴と7つの確認点」で整理しています。
サン・エム・システムの「SCS対応支援サービス」では、SCS評価制度の要求事項と自社の現状の差分を確認できる無料のセルフ診断をご用意しています。Web上で完結し、回答後すぐに結果が表示されます。社内の認識をそろえるための材料としてもご利用いただけます。
まずは以下より、無料セルフ診断をお試しください。
※本診断は当社独自の簡易診断であり、制度上の評価・登録を保証するものではありません。
よくある質問(FAQ)
Q. SECURITY ACTION(★1・★2)は先に宣言しておくべきか?
A. IPAは、SECURITY ACTIONを★3・★4の取得を検討する企業にとっての準備段階として活用することを案内しています。すでに宣言している企業であれば、そこから地続きで考えられる部分があります。ただし★1・★2の宣言が★3の前提条件になるかどうかについては、制度の枠組みを公式サイトでご確認ください。
Q. 取引先から何も言われていないが、準備は必要か?
A. 求められる水準は最終的に取引先との関係で決まるため、現時点で要請がなければ急ぐ必要はありません。ただし現状把握そのものは、自社のリスク管理としても意味のある作業です。また、要請を受けてから整備を始めると、取引条件の提示に間に合わないおそれがあります。要請の有無にかかわらず、自社がどの水準にあるかを把握しておくことには意味があります。
Q. 制度の内容はまだ変わる可能性があるか?
A. 要求事項・評価基準を満たす実装例をまとめた評価ガイド等はこれから公表される段階にあり、細部は今後さらに具体化されていきます。そのため、確定していない部分を前提に大きな投資を決めるよりも、方向性が変わりにくい領域から進めるほうが手戻りが少なくなります。具体的には、情報資産の把握、アクセス権限の管理、記録の整備といった、どの水準を目指す場合にも必要になる部分です。
SCS対応は、制度の解釈と自社業務の実態の両方を突き合わせる必要があるため、どこから手をつけるかの判断に迷いやすい領域です。サン・エム・システムでは、無料のセルフ診断から詳細なヒアリング、規程の整備、技術的な実装、運用の定着までを一貫してご支援しています。支援の範囲は企業ごとに調整しますので、すでにできている領域を除いて必要な部分だけをご相談いただくことも可能です。
サービスの内容や支援の進め方は、下記のページでご確認いただけます。
参考・出典
【この記事を書いた人】
サン・エム・システムコラム編集部
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